DX、アジャイル本チャレンジ、3冊目は「DXの思考法 日本経済復活への最強戦略 」です。
書評!
実に骨太の1冊だった。小手先のDXではなく、日本の組織経営自体の構造から考え直す必要があるということに気が付かされた。
この本を読むまで、ハイセンミセスは、データは資源だ、と思っていたのだが、この本を読むことで、ああ、プロセスも資源なのだな、という新たな知見を得た。日本には資源が少ない。これは周知の事実であろう。よって、資源以外で資産を獲得する必要がある。高度成長期においては、その役割を担ってくれていたのが製造業であったのだと思う。コストを抑えて、効率よく、品質の高い工業製品を、猛烈な働き方によって、大量かつ安定的に生産ができるようになった。そして、長く安定的に働ける日本的な経営により、その方法がうまくはまっていた時代があったということだ。
しかし、日本以上に安く効率的に工業製品が作れる国も増えてきて、既存の方法では、通用しなくなってきた。
では、どうするのか。その1つの階がDXを活かした経営なのだろうと思っている。私は、この本を読む前は、AIも発達してきているが、そのAIを活用するためにも、データ解析の上でも、質の良いデータというものが必要であり、日本人には細かいものをキレイに作れる特性があるので、美しいデータを作って世界に向けて売る、というのが1つの戦略なのだろうと考えていた。
しかし、この本を読むことで、既存の製造業であっても、その他の産業であっても、そのプロセスを徹底的にDX化して、普遍化することで、そのプロセス自体を世界に売ることが出来るのだということに気づかされた。
筆者はいう。
デジタル化の時代に不可欠なのはこの「まずは抽象化してみて、それから具体化する」、つまり感覚的に言えば「上がってからはじめて下がる」という発想
現在の成功しているIT企業は、この抽象化を巧みに行い、そこで用いたプロセスを切り出して標準化し、売り出すのが非常にうまい。AmazonもGoogleも自社で開発した自社でも利用している仕組みを切り出して
ユーザーに提供し、莫大な利益を得ている。
「上がってから下がる」という企業行動を最初に迫ったのがグローバル化であり、その次に、かつよりそれを本質的に迫っているのがデジタル化
この抽象化から具体化に失敗をしてしまったが故にグローバル化にも失敗し、大きく失速しているのが、日本のビジネスなのだという揶揄も含まれているように感じた。
日本の多くの組織では課題があった場合に、その課題が何であるのか考える前に、具体的な解決策に走ることで、課題の本質を見失ってしまっていると筆者は言う。
解決策を得るときに、何かのルールを固定してしまおうという発想ではなく、パターンを探りそれを組み合わせて解決策を作ろうという発想への転換が必要である。それを「アジャイル」と呼んでいる。
ここでアジャイルという言葉も出てきた。アジャイルは、「素早い」「機敏な」といった意味の英単語であり、従来のシステム開発とは異なり、短く開発期間の単位を設定し、その開発期間単位を繰り返すことで、開発に伴うリスクを最小化するという開発手法のことを指すことが一般的だが、ここでは、それを「パターン」を組み合わせて解決策を作るという解釈をしている。
本書では、課題に立ち向かう際には、解決策と具体化に囚われず、課題が本来解決したいことが何かを見極め、抽象化し、パターンを探し、解決に結びつけよ、と繰り返し述べている。このパターンを探すには、ルールや分野に囚われない経験が重要だともいう。パターンの探索方法については、以下の記載で、読者の行動を促すものもあった。
テスト③ パターンを探す ルールや分野に囚われない 「ややこしい」ものを捉え、それに働きかけるには、武器が多い方が良い。その武器が役立つ「パターン」であり、それをあなたの中にどれだけ持っているか、それがIX時代に問われるあなたの経験値だ。特定の仕事を長くやったかどうか、特定の分野に詳しいかどうか、ではない。複数の分野、複数の組織を経験した人間の方が武器は多いはずだ。ましてや前例などの世にあるルールに頼ることは武器にならない。この本を読み終えたあなたが、「さらに深めるにはもっとDX本を読もう」と思うか、「どうも他の分野にもヒントがあるらしいから、たまには学生時代好きだった○○でももういちど勉強してみよう」と思うか、さらには「転職や子会社出向も悪くないな」と思うか、がテストである。
このブログのチャレンジではDX本100冊を目標に掲げているが、DX的な課題解決には、DX本を読んでさらに深めるのではなく、他の分野にヒントがあるので、外にも目を向けよ
といった趣旨の記載である。ちょっと、困ってしまった。
まぁ、私、もともと発散志向なので、複数の経験は勝手にするので、まずはDX本を読み込もうと思う。著者はもともと官僚であったというから、広く浅く(といったら怒られるかもしれないが)俯瞰的に取り組むことが得意なはずで、この助言も今のところは話半分にしたいと思う。
また、長くなるため、ここではご紹介できないが、具体例としては、製造業であれば「ダイセルの網干の例」行政であれば「インディア・スタック」が具体例として大変参考になると思う。この例の解説を読むだけでも本書を読む価値がある。
さて、筆者に熱量に打たれて、書評も熱い書評になってしまった。
それでは、この記事が誰かのお力になれたなら幸いです。それでは、あっちょんぶりけ!